プロテイン・パルフェ

二次元と舞台の兼業おたくが考えたことを書くだけ

01 見えないものを見ようとして

先日、推しの出演舞台が無事に千秋楽を迎えました。よかったよかった。

 

この作品、若手俳優が多く出る舞台でよく使われる、そこそこのキャパの劇場で行われました。500以上1000以下って感じのところ。

全席指定で、S席A席といった座席のランク付けはなく、どのチケットもすべて同じ値段でした。

 

私は推しの出ている舞台は、可能な限り全通します。あくまで可能な限り。

今回の舞台は公演期間が長くて、全通すると破産すると思ったので、今回は全通はしない、行ける限りでいいやという気持ちでした。

私はこの舞台のチケットを、ローラー方式*1で取りました。

 無事に初日も千秋楽もそれ以外の日もチケットが取れ、先行の期間に被りもなかったので、同じ回でチケットが重複してしまうこともありませんでした。

 

発券するまで座席がわからないチケットだったため、「発券してからあんまりよくない席だったら譲渡に出そう」と思いました。

特に珍しくはない考えだと思います。

 

発券開始日になったのですべてのチケットを発券し、後方席やあまりにも端の席は譲渡先を募集しました。

いくつかのチケットは譲渡先が決まりましたが、しかし一枚だけなかなか決まらないチケットがありました。

なぜならそのチケットは平日昼の回で、しかも後ろから数えたほうが早いくらい後方で、かつ端の席だったからです。是非もなし。

この作品がとんでもなく人気作で、「席はどこでもいい!!観ることさえできればいいんだ!!」という人が続出するような作品であればそんなことはなかったかもしれませんが、この作品はそこまででもなかったため、残ってしまったんですね。

 

譲り先を探していて、気づきました。

 

私と同様に長期間譲渡先を探している人のチケット、ほとんどが後方。しかも定価より値下げしている。

逆に「チケット譲ってください」と言っている人、ほとんどが「△列より前方限定」と注釈をつけている。

さらに言うと「○列より前なら定価より上乗せします」という人の多いこと。

 

譲渡先を探している人たちは、なかなか見つからないものだから、公演日が近づくにつれてどんどん値下げしていきました。

半額以下にしてようやく決まった人を何人も見かけました。

 

そのとき思った。

あ、これ経済の授業で習ったことあるわ。

「神の見えざる手」*2だ。

見えた…神の見えざる手が見えたぞ…!!

習ってから○年、ようやく実感を伴って理解できました。

 

なぜこういう現象が起きたのか。

私は、 「公式が座席に見合った適正価格をつけてくれないから、仕方なく客が勝手に適正と思しき価格をつけた」のだと思いました。

 

小劇場ならいざ知らず、キャパが500以上の劇場なら、当然、前方席と後方席では見える景色が全然違います。

あえて後方で観たい、という人ももちろんいますが、基本的に前方センターの席をほしがる人が多いことは明白です。

だからこの作品のチケット市場では、

「前方席の需要が高まるが供給が足りず、結果として価格が高騰する」

「後方席は供給過多で需要が低く、価格を下げざるを得ない」

となり、いわゆる「神の見えざる手」が私の目に見えたのでしょう。

そりゃそうだ。誰だって高品質なものやサービスには高い額を払ってもいいけど、大したことないものやサービスにはそれなりの額しか払いたくないもんね。

 

 舞台に関して言えば、客の席がどこであろうと、キャストさんやスタッフさんの労力は変わりません。

「どの席から見ても面白いと思ってもらえる作品をつくろう」とがんばってくださっていることでしょう(と信じたい)。

でも。たとえば、キャストさんやスタッフさんがステージ上から放つ「面白さ」を、仮に数値化して100だとして。

客席の客はそのうちどのくらいの「面白さ」を受け取れるんでしょうか。

座席が1列目センターだったら、100放たれた面白さを、ほぼ取りこぼすことなくそっくり受け取ることができるでしょう。

ステージとの距離が近ければ近いほど、ステージ上から受け取れる情報量は多くなるのだから。

では、座席が20列目の端だったとしたら?

100放たれた「面白さ」は、70、50、もしかしたら30程度しか受け取れないかもしれません。

人間の顔のでかさにも声のでかさにも限界があります。オペグラを使ってもマイクを使っても、ステージとの距離が遠ければ遠いほど、ステージ上から受け取れる情報量は減ってしまうのだから。

(受け取る客の集中力とか体調によっても受け取れる情報量は変動すると思いますが、きりがないのでここでは考えないものとします)

「面白さ」を100受け取ることができる1列目センターの人と、50しか受け取ることができない20列目端の人が、チケットに対して同じ値段を払わなければならないとなれば、20列目の人が文句を言いたくなるのは仕方のないことでしょう。

それを解決するのが、「公式からの、座席に見合った適正価格の設定」だと私は思うわけです。

 

面白さが100受け取れない後方席でも、「その分値段安いからまあいっか」と思える。

値段が高い前方席でも、「その分面白さいっぱい受け取れるからまあいっか」と思える。

結果みんなハッピー。それでいいじゃない!!!!!

まあ、自分の希望席種が取れないということもありますが…。

 

宝塚など、すでにきちんと「公式からの、座席に見合った適正価格の設定」を実施してくれている界隈もあります。*3

でも、若手俳優界隈の舞台って、座席のランク分けがされていない舞台がまだまだ多いんじゃないかと思う。もしくはこれで本当にきちんと分けた気なの?バカなの?みたいな分け方だったり。*4見切れ席なのに普通の席と同じ値段だったり。

だから客が勝手に適正と思しき価格をつけざるを得ない、なんて事態が起きたのではないかと思います。

なんできちんとランク分けして販売してくれないのかな。そうすると販売コストが増えるのかしら。または「観られればいいだろ文句言うな」ってナメられているのか。

他に理由を知ってる方いたら教えてください。

 

きっと「神の見えざる手」現象は、たいていの若手俳優舞台で起きてることなんじゃないかと思います。

ここまではっきりと私の目に見えたのが初めてだっただけで、もう知ってる人、体験してる人が大半なんだろうな。

経済学を専門に学んでる人や仕事にしてる人が分析したら、小論文の一本くらい書けるんじゃなかろうか。

今後の推しの出演舞台は、何卒きちんとランク分けしてほしいものです。

 

余っていたチケットは重複したわけではなく、譲渡先が見つからなければ自分で観ればいいやと思っていたので、値下げはしませんでした。

結局、定価のまま公演当日に譲渡先が見つかり、事なきを得ました。

 

神は信じる人間、作り出す人間がいれば、どこにでも現れるんだなあ。

たとえどんな意味の神であったとしても。

 

 

*1:すべての日時の回に先行抽選申し込みをして、当たった回だけ行く方式のこと。

*2:あたかも神が操っているかのように、市場の中で需給関係を通じた価格変動が調整されること。詳しくは各自ぐぐってください

*3:といっても宝塚歌劇を実際に観に行ったことがないので詳しくは知りません、間違ってたらごめんね

*4:○ルステてめーのことだぞ